こんにちは、みなとです。
今回は、前回記事の続編として混成軌道の問題の解き方を解説していきます
前編では混成軌道の基礎について解説しました
前回記事→【メチルラジカルの混成軌道は何?】混成軌道について詳しく解説【前編】

メチルラジカルの炭素が形成する混成軌道は
- sp混成軌道
- sp2混成軌道
- sp3混成軌道
- 混成軌道を形成しない
みんなの回答は以下の通り(正解はsp2、正解率63%)


今回はステップアップして、混成軌道を判断する問題の解き方を以下のステップで解説していきます
- 混成軌道に入る軌道、入らない軌道
- 混成軌道の判断4ステップ

目次
混成軌道に入る軌道、入らない軌道
混成軌道は、共有結合のためにs軌道とp軌道をごちゃ混ぜにした軌道のことでした
しかし、混成軌道にはsp3混成軌道・sp2混成軌道・sp混成軌道の3種類があることからわかる通り、元の軌道全てが混成軌道に入るわけではありません

それではどのような軌道(それに含まれる電子)が混成に含まれ、逆にどのような軌道(それに含まれる電子)が混成に含まれないのでしょう?
混成に含まれる軌道(電子)
混成に含まれる軌道(電子)は以下の通りです
- σ結合に使われる電子が入った軌道
- 非共有電子対が入った軌道(例外あり)

σ結合とは各共有結合の1本目の結合のことです
- 単結合→必ずσ結合
- 二重結合→1本はσ結合、もう1本はπ結合
- 三重結合→1本はσ結合、残り2本はπ結合
このσ結合に使われる電子が入った軌道は混成軌道に含まれます
例えばメタンなら以下の図2のように全てσ結合なので全ての軌道が混成軌道になりsp3混成軌道になります


非共有電子対とは、原子がもともと持っていた電子同士で対を作り、共有結合には使われていない電子対のことです
非共有電子対を持つ原子の例としてはアンモニアの窒素原子Nがあげられます

ただし非共有電子対に関しては例外があります。例外に関しては混成に含まれない軌道の章で解説します。
混成に含まれない軌道(電子)
混成に含まれない軌道(電子)は以下の通りです
混成に含まれなかった軌道は、元の軌道であるp軌道のまま存在し続けます
- π結合に使われる電子が入った軌道
- 電子が入っていない空の軌道
- 不対電子が入った軌道
- 共鳴に使用される非共有電子対が入った軌道

π結合は2重結合の2本目の結合、3重結合の2本目・3本目の結合のことです
つまり2重結合では1本はσ結合なので混成軌道が使われますが、もう1本のπ結合に対してはp軌道がそのまま使われます
例としてエチレンを見てみましょう

図4のようにエチレンのCは2重結合を持つのでπ結合を1つ持つことになり、混成には含まれないp軌道が1つ残ることになります

電子が入っていない軌道をもつ例としてはカルボカチオンの炭素原子Cや、ボランのホウ素原子Bがあげられます
ボランの例をみてみましょう

σ結合は混成軌道が使われますが、空の軌道はp軌道のままなので混成軌道はsp2になります
不対電子とは、1個だけでポツンと存在している電子のことです
共有結合にも使われず、非共有電子対になることもできなかった電子のことですね
ちなみに、不対電子を持つ分子のことをラジカルといいます
例としてメチルラジカルをみてみましょう

σ結合は混成軌道が使われますが、不対電子を持つp軌道はp軌道のままなのでsp2混成軌道になります
基本的に非共有電子対が入った軌道は混成軌道に含まれますが、例外があります
それは、非共有電子対が共鳴構造に関与している時です
これの例はピロールの窒素原子Nとインドールの窒素原子Nです
この2つを押さえておけば大体OKなので名前と構造を覚えておきましょう

混成軌道の見分け方4ステップ
さて、いよいよ問題の解き方に入ります


混成軌道の判断は以下の4ステップで進行します
- 分子の構造式を描く
- 構造式を電子で描く(ルイス構造式にする)
- 混成軌道に入る軌道、入らない軌道を参考にp軌道のまま残る軌道を判断する
- 混成軌道に入る軌道の数を数え、4つ→sp3、3つ→sp2、2つspとする

メチルカチオンの炭素原子Cが持つ混成軌道は何か?
ステップ1.分子の構造式を描く

まずこれをしないと始まりませんよね
物質名と構造式を覚えていることが前提になりますので、青本を参考に主な物質は構造を描けるようにしましょう
ステップ2.構造式を電子で描く(ルイス構造式にする)

このステップは非共有電子対、空の軌道、不対電子を見つけるために必要です
単結合しかないからsp3…などとしないで、構造式を電子で描いてみてください(ルイス構造式)
ステップ3.混成軌道に入る軌道、入らない軌道を参考にp軌道のまま残る軌道を判断する

ステップ4.混成軌道に入る軌道の数を数え、4つ→sp3、3つ→sp2、2つspとする

以上の4ステップを踏めばほとんどの混成軌道は判断できるかと思います
構造式を覚えるべきもの、ルイス構造式の書き方などはまた別の機会に紹介します
