
こんにちは、みなとです
先日、Twitterでこんな問題を出題しました
メチルラジカルの炭素が形成する混成軌道は
- sp混成軌道
- sp2混成軌道
- sp3混成軌道
- 混成軌道を形成しない

結果は以下の通りでした

正解は2番で、メチルラジカルの炭素原子はsp2混成軌道を形成します


そこで、今回は混成軌道に関する問題を解く最初のステップとして混成軌道の基礎を解説していきます
なお、混成軌道の見分け方や練習問題は別記事で解説しますのでお待ちください
- 【電子の入れ物】s軌道・p軌道について
- 電子の収納ルール
- 混成軌道の形成
- 混成軌道の種類

【電子の入れ物】s軌道・p軌道について

前に授業で勉強した気がするんだけど…

まず、混成軌道というのは原子が他の原子と共有結合する際に新たに形成される軌道のことです

共有結合には原子が持つ電子が使われるんでしたね
それぞれの原子には電子が存在していて、そのうち最外殻電子が原子同士の結合に使われます
その最外殻電子、最外殻電子という言葉でひとくくりにされていますが実はその中には序列が存在します

原子には最外殻電子を収納するための入れ物が存在します
それがs軌道やp軌道と呼ばれているもので、全ての原子がs軌道を1つp軌道を3つ持っています
このs軌道とp軌道の間にはエネルギー的安定性の違いがあり、
s軌道の方がエネルギー準位が低い(安定) p軌道の方がエネルギー順位が高い(不安定)
という序列になっています

ここに最外殻電子が収納されていきますが、その際に収納のルールがあります
電子の収納ルール
- エネルギー準位の低い安定な場所から入っていく
- 1つの軌道に電子2つまで
- 同じ軌道に入る電子のスピンは逆方向になる(パウリの排他原理)
- 同じエネルギーにはスピンの向きを揃えて1つずつ入る(フントの法則)
電子は不安定な場所を避けるので、2s軌道から先に埋まっていきます
また、1つの軌道の定員は2つまでなので2s軌道がいっぱいになったら2p軌道が埋まっていきます

でも安全地帯にも定員があるんだ…
パウリの排他原理とフントの法則については今回は割愛します
これらのルールにしたがって最外殻電子を収納してみましょう
今回は炭素原子(最外殻電子4つ)を例にあげます

炭素原子の最外殻電子は図2のように収納されます
最外殻電子にエネルギーの違いがあることがわかりますね
混成軌道の形成
さて、ここから本題に入ります
ルールに従って収納された最外殻電子ですが、このままでは結合に使うことができません


共有結合は原子と原子が1つずつ電子を出し合って結合します
炭素は余っている最外殻電子が4つなので結合の腕が4本の原子ですよね?
なので共有結合のために電子を1個ずつ外に提供する必要があり、そのために図3のように電子はバラバラに存在する必要があります

しかし図3のような配置は起こりません。電子は安定なところがあればそこに逃げてしまうからです。
つまり、2sに空席があったらすぐさま2s入り込んでしまいます

そこで電子を均等に1つずつにするため、結合の際はs軌道とp軌道をごちゃ混ぜにして新たな軌道を作ります
それが混成軌道(図4)です

s軌道1つとp軌道3つからsp3混成軌道が形成されました
混成軌道はsもpもごちゃ混ぜにしてしまったのでエネルギー準位に違いはありません
よって電子は1つずつ軌道に収まり、4つの電子を結合に使うことができます


混成軌道の種類
混成軌道には3種類あります

混成軌道の見分け方は次回解説するよ
- sp3混成軌道
- sp2混成軌道
- sp混成軌道
1.sp3混成軌道
s軌道1つとp軌道3つが混ざった混成軌道です
一般に結合角は109.5°となり、形は正四面体となります
メタンのC原子やアンモニアのN原子など単結合のみの原子のほとんどがsp3混成軌道です
2.sp2混成軌道
s軌道1つとp軌道2つが混ざった混成軌道です
結合角は120°となり、分子は平面構造になります
エチレンのCやアルデヒドのOなど二重結合を含む原子やホウ素(B)が形成します
3.sp混成軌道
s軌道1つとp軌道2つが混ざった混成軌道です
結合角は180°となり、直線構造になります。
アセチレンのCやニトリルのCなど3重結合を持つ原子やベリリウム(Be)が形成します
まとめ
- 【電子の入れ物】s軌道・p軌道について
- 電子の収納ルール
- 混成軌道の形成
- 混成軌道の種類
- 原子には電子を収納するための入れ物(s軌道・p軌道)がある
- s軌道・p軌道はエネルギー的に違いがあってs軌道の方が安定している
- s軌道は1つ、p軌道は3つある
- エネルギー準位の低い安定な場所から入っていく
- 1つの軌道に電子2つまで
- 同じ軌道に入る電子のスピンは逆方向になる(パウリの排他原理)
- 同じエネルギーにはスピンの向きを揃えて1つずつ入る(フントの法則)
ルールに従うと、炭素原子であれば以下の図2のように電子が配置される

- s軌道、p軌道のままだと電子が1つずつになれない
- s軌道とp軌道が混ざってエネルギー的に等しい混成軌道を形成する
- sp3混成軌道
- sp2混成軌道
- sp混成軌道
- s軌道1つとp軌道3つからできる
- 単結合のみのほとんどの原子
- s軌道1つとp軌道2つからできる
- 二重結合を持つ原子やホウ素原子
- s軌道1つとp軌道1つからできる
- 三重結合を持つ原子やベリリウム原子
