【薬剤師国家試験攻略記事】 質量分析法(MS)スペクトルについて解説

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先日こんな質問をいただきました

「MSスペクトルあたりが全く理解できないので教えていただけませんか?」

MSを始め、スペクトルを読む問題は、薬剤師国家試験の中では少数派の暗記ではなく解き方が大切な問題ですね

たしかにコツを掴めないと、覚えるべきことは覚えられているのに中々解くことができず手応えを感じにくいので難しく感じてしまいます

そこで本記事では

  • そもそもMSスペクトルってなに?
  • MSスペクトルの問題を解くのに必要な知識
  • 知識を用いてMSスペクトルの問題を解く方法

について解説していきます

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そもそもMSスペクトルってどんなものだっけ?

まずはMSスペクトルを見てみましょう

質量分析法(MS)とは、どんな質量の分子が存在するか分析するものです

スペクトルの横軸、m/zとあるのが分子の質量を表していて、ピークが伸びていればその質量の分子が存在することになります。もちろん高ければ高いほどたくさん存在する事を示します。

さて、今回示したMSスペクトルには多くのピークが見られますね

なぜこんなに多くのピークが存在するのでしょうか?

それを理解するにはMSの仕組みを少し説明する必要があります

MSスペクトルを得るためには、対象物質をイオン化する必要があります

原子や分子は小さすぎて秤では量れないので、電気の力を使うからです

このイオン化には大きなエネルギーがかかるので、耐えられなくなった対象物質が分解を起こして小さな欠片になります(フラグメンテーション)

この分解によってできた欠片がピークとなって現れています

MSスペクトルでは、もとの分子のピークに加え、欠片のピークなどの情報を組み合わせることで対象物質の量や分子の組成を解析することができます

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これは覚える!MSスペクトル問題の必須知識

MSスペクトル問題を解く上で覚えるべきことは以下の4つについてです

  • フラグメンテーション
  • 分子イオンピーク
  • 基準ピーク
  • 同位体ピーク

単語の意味を知っていればいいものから、色々覚えなければいけないものまでありますが、これから解説していくので覚えていきましょう!

フラグメンテーション

いきなりですがここが山です

質量分析法(MS)では対象物質をイオン化して分析を行います

その際に大きなエネルギーを加えるため、対象物質の一部はそれに耐えきれず分解されます

この分子の分解のことをフラグメンテーションと言います

さて、皆さんはMSスペクトルの問題を解くにあたってフラグメンテーションがどの様に起こるか

つまり、イオン化の際に分子がどのように分解するかを覚えなければいけません

フラグメンテーションの起こり方はたくさんあるのですが、薬剤師国家試験的に大切なフラグメンテーションは以下の4つです

  • カルボニル基のα開裂
  • ベンゼン環のβ位開裂
  • McLafferty転位によるエチレンの脱離
  • 四員環転位によるH転位

青本などを見ればまだいくつか載っていますが、全て覚えるのは大変だと思うのでまずは4つ覚えましょう

それぞれについて解説していきます

カルボニル基のα開裂

カルボニル基はα結合、つまりOが二重結合している炭素の隣で開裂します

これによって例えば安息香酸エチルでは以下のような反応が起こります

カルボニル基を見つけたらα結合(根元の炭素の隣)を切るようにしましょう

ベンゼン環のβ位開裂

ベンゼン環ではβ位、つまりベンゼン環に直接結合している炭素の反対側の結合が開裂します

これによって以下のような反応が起こります

ベンゼン環+CH2の分子量は91ですので、m/zが91のピークがある場合はベンゼン環の存在が予想されます

ベンゼン環を見つけたらβ位(ベンゼン環の隣の炭素の反対側の結合)で切るようにしましょう

McLafferty転移によるエチレンの脱離

安息香酸エチルのような分子内で六角形を作ることができる分子は、以下のように電子が動いてエチレンが脱離します

ポイントはエチレンが脱離することで分子量が28小さくなることです

m/zが28減ったところにピークがあったらこれを疑いましょう

エステルの四員環転位によるH転位

エステル構造を見たらこの反応に注意しましょう

以下の機構でHが転位します

ケテン(O=C=CH2)が脱離したあとの分子は、Hが移ってきた分、m/zが1大きくなることに注意しましょう

フラグメンテーションは以上の4つを押さえておけば問題を解く時に困らないかと思います。

分子イオンピーク

フラグメンテーションが起こる前の対象物質のピークです

一度も分解が起きていない分子のピークなので、m/zが一番大きいものが分子イオンピークです

基準ピーク

数あるピークの中で一番高いピークのことです

同位体ピーク

同位体(原子番号が同じで質量数が違う)の存在によって、ピークが分かれたものです

同位体をもつ原子が分子の中にあると、ピークのすぐ近くに一定の比率の高さのピークが現れます

ここで覚えるべきはClとBrの存在比率です

Clの同位体比率

Clは質量数が35のものと37のものの存在比率が3:1です

よってClを1つ含む分子のピークは分子量が小さい方のピークが3分子量が大きい方のピークが1の割合で分かれます

Brの同位体比率

Brは質量数が79のものと81のものの存在比率が1:1です

よってBrを1つ含む分子のピークは分子量が小さい方のピークが1分子量が大きい方のピークが1の割合で分かれます

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いよいよ実戦!MSスペクトル問題の解き方について

では、先程解説した知識をふまえてMSスペクトルを読んでいきましょう

問題1

まずは用語の確認です

分子イオンピーク、基準ピークはどれでしょうか?

分子イオンピークは分解がまだ起きていないピーク、つまり一番m/zが大きいピークでしたね

また、基準ピークは一番高いピークでしたね

よって正解は4が分子イオンピーク、3が基準ピークです

国家試験ではこれらが逆になって聞いてくることがあるので気をつけましょう

問題2

次は1~4のピークがそれぞれどんな分子を表しているか考えていきましょう

このスペクトルの対象物質はこちらです

最初は難しく感じるかもしれませんが、手順に沿って1歩ずつ解いていけば大丈夫です

まずやって欲しいのは対象物質の分解(フラグメンテーション)です(最重要)

今回の対象物質はどこで切れるでしょうか?

ここです

②で切れる場合はエステルの四員環転位も起こる場合がありますね

全てのパターンを書き出してみます。するとフラグメントイオンとして以下が考えられます

あとはm/zと分子量を見比べて当てはめればいいですね

え?フラグメントイオンは8パターン挙げたのにピークは全然少ないって?

そう、厳密には切れた後にイオンにならなかったりするので全ての断片が観測されるわけではありません

そのあたりも頑張れば理解できますが…薬剤師国家試験では観測されたピークについてしか問われませんから、観測されないピークのことを考えるのは効率が悪いですので今回は割愛します

とにかく与えられた物質を考えられるパターン全てで切断し、ピークのm/zと対応するものだけ採用すればいいのです

問題3

今度は逆に、パーツからもとの分子を当てましょう

以下のスペクトルが得られる対象物質が持つと予想される

1.原子 2.構造

を考えてください

まず対象物質が持つ 1.原子 について考えます

ピークから少し離れたところに一定の割合のピークが存在していたらそれは同位体ピークでしたね

今回は2つ離れたところに同じ高さ、つまり1:1のピークが存在するので対象物質はBrを持っていることがわかります

次に対象物質が持つ 2.構造 について考えます

m/z228(230)のピークから28減ったm/z200(202)にもピークがあります

m/zが28減っていたらMcLafferty転位によるエチレン(H2C=CH2)の脱離を疑うんでしたね

McLafferty転位は六員環構造を持っていないと起こらないため、今回の対象物質は分子内に六員環構造を持つことがわかります

これらを踏まえ、今回の対象物質として適切なものは以下のうちどれでしょうか?

正解は②です

分子内で6員環構造を取れるのは②だけですね

-CH2CH3の部分を捻ってあげると以下の構造になります

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まとめ

MSスペクトルのコツはとにかく分子を切断することです

薬剤師国家試験のMSスペクトルの問題ではよく

「このピークは〇〇に由来する」

と聞かれますが、これは切った後にできる断片を確かめないことには分かりません

そして分子を切断するためにはどこで切れやすいのかしっかり覚えなければならないので

しっかり基礎知識を備えた上で、その知識の使い方を問題を使って養ってください

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